【レポート】「地元のことはみんな好き」で地域の観光はちょっと前に進める

【レポート】「地元のことはみんな好き」で地域の観光はちょっと前に進める

みなさん、地域の観光と言われて何を思い浮かべますか?

自然体験、グルメイベント、ゆるキャラ…。全国の地域で様々な取り組みがなされています。最近ではインバウンド(訪日外国人旅行)や地方創生なんて言葉も出てきてますね。

そのような取り組みがされる一方で、地元の人と観光客のトラブルを聞くこともちらほら。近年、観光客が増えている伊根町もその例外ではありません。

じゃあ地元の人も応援してくれるような観光の形ってどんなものなんだろう?今回はそんなことを考えてみるイベント「Ine PORTrait」を開催しました。

キーワードは「地元のことはみんな好き」。

伊根の観光のかたちを考える「Ine PORTrait File02」

それぞれの分野で活躍する人のお話を通して、まちの未来に思いを馳せてみる場「Ine PORTrait」。今回のテーマは「観光」です。伊根町観光協会事務局長の吉田さんをお呼びし、伊根町の観光業の経緯や今後の展望についてお聞きしました。

参加された方の子どもの頃のお話やお隣宮津市から来られた方のお話も入り混じり、少人数ながら盛り上がるイベントとなりました。

Ine PORTraitとは
おちゃやのかかミライプロジェクト」のプログラムの一つ。伊根で活躍している人、伊根で実現したいことがある人にフォーカスし、その人の経験や技術、思いや夢をシェアします。また「PORT=港」のように様々な人が行き交い、繋がれる場にしたいという思いも込めました。
真剣に資料に目を通すみなさん

朝ドラで一躍「観光地」に

平成5(1993)年4月5日、全国のお茶の間に伊根の舟屋が映りました。しかも1日朝昼2回、半年間ずっと。

NHK朝の連続テレビドラマ小説「ええにょぼ」。戸田菜穂さん主演で、伊根も舞台の一つになりました。オープニングに映し出される舟屋が印象的で、多くの視聴者が伊根町を訪れたようです。

※ちなみに伊根町では毎日お昼の12時に防災無線(各家に設置)からオープニングのメロディーが流れます。下のリンクから当時の映像が見られます。オープニングもちょっと聞けるので是非。

ええにょぼ|NHKアーカイブス

朝ドラの放送開始と合わせ、道の駅も開業。観光客数は前年の倍以上となりました。今まで釣り客と海水浴客がほとんどだった伊根町は、その半年間で「舟屋の観光地」として世の中に知られることになったのです。

その後は朝ドラ景気がある程度継続するも、観光客数も3分の2ほどに落ち着き、近年は増加傾向にあります。

伊根町人口グラフ

「海の京都」伊根町マスタープラン より引用

観光の仕方も変わりました。以前は釣り客と海水浴客が多かったため、宿泊する方が多かったのですが、舟屋の観光をメインにする方が多くなり日帰りの観光が増えました。かといって宿泊者数が減るわけではなく、平成8(1996)年に温泉旅館ができると宿泊者数はそれまでの約2倍になりました。

産業としてみてもその消費額は伸び続けており、「ええにょぼ」が放送された平成5(1993)年に比べ、平成28(2016)年は約2倍になっています。

観光のポテンシャルと限界

このように数字だけみていると伊根町の観光は順調に進んでいるように見えますが、「観光業のポテンシャルと限界を把握しながら進めていくことが大切」と吉田さん。

観光産業は地域の他の産業に経済効果を波及させる効果も持ちます。それは人口が減少し、域内の消費額が減少するであろう地域にとって非常に大きなものです。今後は海外からの観光客の増加も見込め、雇用創出にも期待がかかります。

しかしその反面、観光客増加に伴う住民とのトラブルの増加など、観光に関わる人以外はそのメリットが見えにくいという性質もあります。また多くの人を地域に呼び込む力があるとはいえ、実際に人口が増えることには結びつきにくく、暮らしの面での地域の人不足は解消されません。

そのような観光業の性質を理解し、ビジョンの共有・異業種連携と役割分担を行うことで、まちづくりを進めていくことが大切とのことでした。

「地元のことはみんな好き」から始める

吉田さんのお話が終わり、質疑応答の時間。

昔の伊根の観光の様子や今から20年後の観光がどうなっているかといったことまで、様々な話題が出ました。その中でもみなさんの関心が集まったのは「地域で観光を進める上でのしがらみ」。

  • 観光客の方に満足してもらうため新しい取り組みを始めたいが、地域の目が気になる
  • 今は何かと禁止されているが、昔はもう少し何かと寛容だった気がする

などの意見が出て、「では現状どうしたら地域で観光を進めていけるのか」というテーマに移っていきました。

そこでヒントになったのが宮津市上世屋(かみせや)から来られていた小山さんのお話。小山さんは近日中に上世屋で食肉解体施設の営業を開始するとのこと。当初は地域の方に反対されたりもしましたが、農閑期の冬の生業として、また上世屋の冬の暮らしを支えるために(豪雪地帯のため若手が外に働きに出てしまうと除雪等の担い手がいなくなってしまう)始める事業であることを懸命に伝え、理解してもらいました。

そこで小山さんが感じたのは「地元のことはみんな好き」ということ。地域を思って事業の提案をした小山さんですが、反対した方もまた、その人の立場から地域を思っているということを感じました。その点を話し合いの場で共有しようとすることにより、徐々に事業に対して理解が得られていったとのことです。


上世屋Webサイト 小さく生きてきた http://kamiseya.com/knowledgeより引用

吉田さんのお話にも「ビジョンの共有」ということがありましたが、それを実現するためのヒントはここにある気がしました。

まずは「地元のことはみんな好き」「みんな地元のことはよくなってほしいと思っている」というスタート地点にお互いが立ち、そこからビジョンを作っていく。そうすることで対立関係になるのを防ぎ、建設的な議論を交わす下地ができていく。

「地元のことはみんな好き」という前提にまず立つことが、地域の観光を進める第一歩になるのでは?と気づかせてくれたイベントになりました。

今回話の中で紹介させてもらった上世屋の獣肉加工の事業。今では地域の皆さんも応援されているそうです。下記のリンクに小山さんの狩猟に対する思い、今回の事業の経緯などが詳しく書かれていますので是非ご覧ください。今後の動きが楽しみですね。

上世屋(宮津市)のWebサイト
狩猟をナリワウ|小さく生きてきた。

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